親権と監護権(養育権)を巡る紛争での注意点

養育権と監護権

  • 「自分は親権をとれるのでしょうか?」
  • 「自分に監護権はとれるのでしょうか?」

 離婚する夫婦間に子どもがいる場合、親権や監護権をとることできるかどうかは重大な関心事です。

 ちなみに、「養育権」という言葉を使う方もいらっしゃいますが、法律上、「養育権」という言葉はありません。おそらく皆さんは「養育権=監護権」という意味で使ってらっしゃると思うので、ここでは「養育権=監護権」として扱います。

親権と監護権(養育権)の違い

 親権とは、親が未成年の子どもを監護・養育し、財産を適切に管理する権利と義務のことです。

 監護権は、親権のうち、監護・養育の部分のみを指すような概念です。平たく申し上げると、子どもと一緒に暮らして子どもの世話をし、学校に通わせるなど必要な教育を受けさせることを指します。

 詳細な説明はこちらをお読みください。 >>親権  >>監護権

 親権や監護権には、「権」という言葉が使われているので勘違いしやすいですが、権利だけではなく義務を伴います。
 例えば、子どもが親戚から大金を贈与された場合、親権者は、そのお金を適切に管理する必要があり、子どもの学費に使うことは許されるとしても、親権者個人の遊興費のために使ってしまうことは許されません。子どもやその身の回りのことなどの管理があまりにずさんだと、親権を剥奪されることもあります(民法835条)。
 また、監護者は、子どもが病気になれば、自宅で看病する義務がありますし、必要に応じて病院に連れて行く義務があります。

親権と監護権(養育権)が、別々の親に属する場合

 一般的に親権者と監護者は一致するのですが、場合によって一致しないこともあります。

(1) 離婚前の別居中の間は、父親と母親の両方が親権をもちますが、監護権は子どもと一緒に暮らしている親のみがもちます。

(2) 離婚後、親権者である親に、子どもを監護できないような事情がある場合、または、子どもと一緒に暮らしている親(監護者)に、子どもの財産をきちんと管理できないような事情がある場合なども、親権者と監護者が別々になります。

親権・監護権(養育権)をとりたい方が注意すべきこと…手続の違いの観点から

 ここでは、親権・監護権(養育権)を取りたい方にとっての、手続の違いからの注意点を申し上げます。
 親権と監護権(養育権)においてどのような点が重視されるかは、次の各ページをお読みください。
>>親権  >>監護

 これまで述べてきたように、親権と監護権(養育権)は、一応は別の概念なのですが、親権が、監護権(養育権)を包括する概念であるために、両者を巡る紛争も、密接に関わっています。別々の親に帰属することもあると述べましたが、それは例外中の例外の話であり、ほとんどの場合において親権と監護権(養育権)は、同一の親に帰属します。

 他方で、親権を巡る紛争と、監護権(養育権)を巡る紛争は、裁判所での手続が微妙にずれているので、注意が必要なのです。

 ややこしいので細かい説明は省きますが、誤解をおそれず、簡略化して説明しますと、
(1) 監護権(養育権)を巡る紛争の手続の方が親権を巡る紛争の手続よりも、早く結論が出る
(2) だから、監護権(養育権)の方が親権よりも早く決まる
(3) そして、先に決まった監護者(養育者)が、そのまま、親権を得ることが多い
ということです。

 (ア)監護権(養育権)を巡る紛争の手続を担当した裁判官が、(イ)親権を巡る紛争の手続をそのまま担当するとは限りません(むしろ別の裁判官が担当することが一般的です。)
 しかし、当然のことながら、(イ)の裁判官は、(ア)の結論を読みますし、(ア)において重大な事実誤認とか、(ア)の結論が出た後に大きな事情の変化が生じた場合でない限りは、(ア)の結論を尊重しなければなりません。
 別の言い方をすれば、監護者(養育者)として適任だと認められた親に、そのまま財産管理権も任せた方が、子どもの生活に支障がないわけです。
 つまり、監護権(養育権)を巡る争いが、そのまま、親権を巡る争いの勝敗を決すると言っても過言でないわけです。
 なので、配偶者が子どもを連れて実家に帰ってしまい、戻ってこないといった事情があるときは、いち早く、「監護者指定・子の引渡し」の審判を家庭裁判所に対して申し立てる必要があります。

手続の違いを理解していなかったことが問題となった例

 当事務所で、このようなご相談者の方がいらっしゃいました。離婚経験のある方で、離婚訴訟は数年前に終わっており、当事務所には別件でご相談に来られました。
 その方には子どもがいたのですが、親権者ではないとのことでしたので、その理由を尋ねたところ、次のような事情から親権をとることができなかったそうです。

  •  ・子どもは後で連れて行けばいいと思い、とりあえず自分だけ別居した。
  •  ・その後、子どもを連れて行こうと思ったが、配偶者に弁護士が就き、「連れ去りだ」と言われたのでできなくなってしまった。
  •  ・自分も弁護士に依頼したが、その弁護士から、「離婚訴訟の中で親権を争えばいい」と言われ、「監護者指定・子の引渡し」の審判をしなければならないことは知らなかった。
  •  ・離婚訴訟の決着がつくまでに2年くらいかかり、その間、子どもは配偶者の元で問題なく育っていたので、結局、裁判所は、配偶者の方を親権者と認定してしまった。

 もちろん、その他の詳しい事情はうかがっておりませんので、そのご相談者の方が、監護者指定・子の引渡しの審判を申し立てていたとしても、結論は変わらなかった可能性もあります。
 ただ、親権に関する法的手続と、監護権(養育権)に関する法的手続の違いを理解し、きちんと対応していないと、勝てる事案でも負けてしまうこともあり得るということをご理解いください。

忘れていただきたくないこと…子どもの健全な成長

 ここでは分かりやすく説明するために、「勝ち・負け」「親権をとる・とれない」といった表現を使いました。
 しかし、本来なら、子どものために、どちらが親権者となるのが好ましいか、どちらが監護者(養育者)となるのが好ましいかを、夫婦が真剣に考える必要があるということを忘れないでください。
 子どもにとってはどちらも親です。子どもに健全に育ってもらうためには、両親の離婚後も、子どもが双方の親と気兼ねなく交流をすることができることが大切です。
 監護権(養育権)や親権を巡り、熾烈な争いを繰り広げてしまうと、心にしこりがのこり、その後の交流も敵対的になってしまうことはよくあります。そうならないためにも、弁護士として、いたずらに紛争を激化させることはしてはならないと考えています。


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