受任通知とは
いきなり弁護士から書簡が届いたらびっくりされることでしょう。離婚トラブルなどの紛争で相手が弁護士を立てた場合に、相手方の弁護士から、その旨を知らせる「受任通知」という書類が郵送などで届きます。
受任通知とは何か、受任通知の目的やその内容、受任通知が届いたらどうしたらよいのかをまとめました。
受任通知とは何か
「受任通知」とは、弁護士が依頼者から依頼を受けて代理人となったときに、弁護士から紛争の相手方に対し、このことを知らせる通知です。相手方に対するファーストコンタクトとなる書面です。
弁護士が離婚事件の依頼を受けた場合も、相手方に対して受任通知を出します。例えば、妻から依頼を受けた場合は、夫に対して、妻の夫に対する離婚請求について依頼を受けて妻の代理人になった旨の受任通知を出します。
なお、弁護士が依頼を受けた際、すでに相手方が弁護士を立てていた場合には、その弁護士に宛てて受任通知を出すことになります。
受任通知の目的
離婚事件だけでなくすべての事件に共通していえることですが、弁護士が事件の依頼を受けた場合、弁護士はその依頼者の代理人となります。それ以降は、弁護士のみが紛争の相手方とやりとりするようにし、相手方が依頼者に直接接触してくるのを避ける必要があります。
そのため、弁護士は事件の依頼後速やかに、相手方に対して受任通知を出し、依頼者に弁護士が就いたことを知らせるとともに、今後は、弁護士に対してのみ連絡をするように、依頼者には直接連絡をしないように通知します。
なお、依頼者にも、今後一切相手方に連絡をしないように、相手方から連絡があっても何も話さないように指示しています。
受任通知の書式と内容
離婚事件の受任通知に決まった書式はありません。弁護士や弁護士事務所それぞれの書式を用いています。離婚の受任通知の内容としては次のようなものとなります。
〒○○○―○○○○
横浜市・・・・・
××××様
令和○○年○○月○○日
〒000-0000 横浜市×× △△法律事務所 電 話045-111-2222 FAX045-111-3333 神奈川県弁護士会所属 弁護士 甲野一郎
受任通知
1 冠省、当職は、○○さんから、○○さんの貴殿に対する離婚請求についての依頼を受けて、その代理人となった神奈川県弁護士会所属の弁護士です。
2 近日中に貴殿を相手方として、横浜家庭裁判所に離婚調停を申し立てる予定です。裁判所から貴殿に通知が届きますので、ご対応下さいますようお願いします。
3 なお、今後は、○○さんに対し、本件請求に関する連絡を一切しないようにお願いするとともに、本件に関する通知・連絡等は、今後はすべて当職宛になされるようにお願いいたします。
草々
上記文例の項目2については、事案によりますが、内容を
○○さんとしては、次の条件により、協議離婚に応じて頂きたいと考えております。
①親権者
親権者は○○さんと定める
②養育費
××さんは○○さんに△万円支払う
③財産分与・慰謝料
××さんは○○さんに△△△万円支払う
つきましては、離婚の意思の有無や、離婚条件に関する貴殿のお考えについて、本書面到着から2週間以内にご回答いただきたくお願いします。」
などとして、離婚条件を提示し、相手に同意や意見を求める記載にすることもあります。
受任通知が届いたら
弁護士から受任通知が届いたら放置しないで内容をよく確認して下さい。
受任通知とは、上でも述べたとおり、弁護士が代理人となった通知です。もし、内容に分からないところがあれば通知を出した相手方の弁護士に連絡して聞いても構いません。相手に弁護士が就いたからといってこちらも弁護士を依頼しなければならないわけではありません。
もっとも、ご自分で対応することが困難だと感じた場合は、弁護士に相談したり、依頼することが良いでしょう。
受任通知を無視したら
また、受任通知に回答の期限が設けられていることも多いです。離婚事件の場合、受任通知を無視して期限内に回答しないと、直接その弁護士から回答をもとめる電話がかかってきたり、調停が申し立てられたりすることはあるでしょうが、期限を絶対に守らなければならないということはありません。期限までに回答できそうにないときは、例えば、自分も弁護士に相談してから回答したいなどと言って、期限を延ばすように言ってもいいわけです。
さらに、受任通知には上に述べたように、通常は、直接本人に連絡しないで弁護士にのみ連絡するよう記載されています。しかし、これは正直なところお願いのレベルであって、弁護士からの通知であっても法的に拘束力のあるものではありません。
したがって、そのお願いに反して、弁護士を通さず本人に電話やメールなどで直接連絡しても、違法になりませんし、何かペナルティが科せられるわけではありません。
とくに離婚事件の場合、感情的な問題が大きく、弁護士から受任通知が届いても、「直接本人と話がしたい」との思いが強く、通知を無視して本人に直接コンタクトをとろうとする方が多いです。(離婚原因の有無が微妙な事案で、訴訟により離婚を成立させた事例がそうでした。)
しかし、受任通知に反して本人に直接連絡が取れても、本人は、予め弁護士から直接対応しないよう指示を受けていることがほとんどで、おそらく夫婦間の問題に関する話はできません。本人と直接話しをすることは、何ら問題の解決にはなりませんので、受任通知を受け取った後は、窓口は弁護士のみ(本人=弁護士)と考え、初めから弁護士とやりとりすることをお勧めします。
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