母親が子の監護者指定や引渡しの審判、直接強制執行を行って子を取り戻した事例

依頼者属性 女性 20代 (横浜市在住)
相手方属性 男性 20代 (横浜市在住)

依頼の経緯

 依頼者である母は離婚を前提として2歳の男の子と一緒に別居を開始して実家に戻った。

 それからすぐに父側から家庭裁判所に子の監護者指定、子の引渡しの審判の申立て、面会交流調停の申立て等がなされた。

 当事務所の弁護士はこの段階より母から依頼を受けており、審判や調停において母側の代理人として活動していた。

 面会交流調停において、父側代理人や調停委員より、直接面会を実施するように強く求められた。

 当方の依頼者である母は当初これを拒んでいたが、父側から面会交流後には必ず子を帰すとの約束がなされたので、やむなく直接面会を実施した。

 何回か行われた直接面会において、父は子を帰す時間を勝手に延長して守らず、母は毎回苛立ちを覚えていた。

 数回目の面会交流を終えて父が子を母に帰す直前、子は父ともっと一緒にいたいと考えたため、「ママに叩かれた」と父に言った。それを聞いた父は、母が子を虐待していると決め込み、「疑いが晴れるまで子を帰さない」と母に言い、帰すことを拒否した。当事務所の弁護士が夜11時過ぎに駆けつけて父と対応したが、父は子を帰そうとしなかった。

 父側はそれからすぐ、家庭裁判所に申し立てていた監護者指定、子の引渡しの審判と面会交流調停の申立てを取り下げた。

当事務所の対応

1 監護者指定、子の引渡しの審判、審判前の保全処分の申立て

 当事務所の弁護士は直ちに、家庭裁判所に監護者指定、子の引渡しの審判、審判前の保全処分(この種の事件では通常「3点セット」と呼ばれる)の申立てを行った。

 父側は、子の体に痣が数か所ある証拠の写真を提出して、母が子を身体的に虐待していると主張してきた。

 それに対して当方は、その痣は虫刺されによるものであると主張し、父が提出してきた写真と同じ子の体の場所に虫刺されがあることを示す1か月くらい前の写真を提出した。それ以外にも、母が子を虐待などするはずがないことを様々な証拠と共に提出して主張した。

 父側は、子が母の元に帰りたくないと言っている動画を証拠として提出してきた。

 母はそれを見て、動画に映っている子の態度が不自然であること、子がこのような言葉を使うはずがないことを指摘し、父が子を洗脳した結果であると主張した。

 子が通っていた保育園の園長にも依頼し、子が1日でも早く母の元に帰ることを求める書面を作成してもらい、証拠として提出した。

 結果として、家庭裁判所は当方の主張を全面的に認める審判を下し、保全処分も認めた。

2 子の引渡しの直接強制執行

 家庭裁判所の保全処分決定を受け、当事務所の弁護士が父側の弁護士に、子を任意に引き渡すように要請したが、子が母と会いたくないと言っているとの理由で拒否してきた。

 そこでやむなく当事務所の弁護士は、「執行官に子の引渡しを実施させる決定」の申立てをして、間接強制では父が引渡しに応じる可能性がないことを主張し、執行官による直接強制の実施が認められた。

 また、子は父の実家で父や父の両親と一緒に暮らしており、前に住んでいた場所ではなかったため、「第三者の占有する場所での執行の許可申立て」を行い、問題なく認められた。

 当事務所の弁護士は直ちに、地方裁判所の執行官に対して「引渡実施申立て」を行った。

 「子の引渡しの直接強制」は一般的に成功率が低いものであるため、当方としては初回の執行で成功するようにすべく、慎重に準備を進めた。

 具体的には、当事務所でよく調査を依頼する探偵を母に紹介し、父が日中にどのような行動をするかを探偵に10日間くらい観察してもらった。その結果、父は平日の特定の曜日の特定の時間からは、自動車で仕事に出かけることが多いことが分かった。

 父はいわゆる「カスタマーハラスメント」を度々行う人物であるため、子の直接強制の現場に父が居合わせると執行が困難となるおそれが強かった。

 そこで、父が不在である可能性が高い日時を定めて執行官と連絡を取って、その日時に執行することとした。

 執行が困難であることが予想されたため、予め地元の警察官数名にも執行に立ち会ってもらうように当事務所の弁護士から執行官に要請し、警察官3名も立ち会うことになった。

 執行当日も探偵に父の行動を観察してもらい、予想どおりの時間に父が自動車で仕事に出かけたことを確認した上で、執行官、児童心理学専門家である執行補助者、解錠技術者、警察官らと共に父の両親宅に行って執行を実施した。

 予想どおり、子の祖父母は強制執行に強く抵抗したため、執行官が強制的に子を祖父母から引き離し、母に引き渡した。

 その後、近くで待機していた母方の祖母が運転する車で、母の実家に無事戻ることができ、子の引渡しの直接強制は成功して終了した。

 子は当初号泣して執行に抵抗していたが、母が子を連れて祖父母宅を出てから間もなくピタッと泣き止み、何事もなかったかのようになった。それまで数か月間一緒にいられなかった母と親密に話すようになり、父に連れ去られる前の母子にすぐに戻った。

弁護士のコメント

 成功率が高くない「子の引渡しの直接強制」の成功率を高めるべく、探偵に相手の行動調査を依頼したことで、依頼者である母も精神的に安定して執行準備を進めることができました。

 執行が成功裏に終わった直後から、父は母に対する名誉棄損行為をするようになり、当事務所の弁護士は地方裁判所に「配偶者暴力等に関する保護命令申立て」をして認められたのですが、それについては別の解決事例で詳しく述べます。

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