離婚はせずに相当額の婚姻費用を獲得した調停事例
依頼者属性 | 30代女性 | 無職 |
相手方属性 | 40代男性 | 会社員 |
子どもの人数 | 0人 | |
手続きの種類 | 調停 | |
主な争点 | 婚姻費用 |
依頼の経緯
ご依頼者は専業主婦。夫婦の仲が破綻していて、しばらく前から別居していた。
妻は夫と離婚したいが、夫は応じてくれない。また生活費(婚姻費用)を支払ってくれないとのことで、当弁護士事務所にご相談いただいた。
当事務所の対応
依頼者から事情を詳しく聞いたところ、離婚しても財産分与はほとんど見込めないこと、慰謝料についても立証が困難であって認められない可能性が高いこと、依頼者は病気をかかえているために稼働できないことから、離婚後の生活が成り立たないことが分かった。
そこで、離婚はせずに、別居を継続し、夫から生活費をもらって生活する方が良いと判断し、そのように助言した。
弁護士から夫に婚姻費用(生活費)を支払うよう請求したが、夫は支払おうとしないので、直ちに家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てた。(婚姻費用分担請求調停とは、配偶者や未成熟の子供の生活費の分担について、家庭裁判所の仲介により話し合いをする手続である。)
夫は、調停委員に対しても威圧的な態度で、生活費を支払わなければならないことに納得せず、また、源泉徴収票等収入を証明する資料も頑として提出しなかった。
調停は不成立となって終了し、審判手続に移行した。
婚姻費用増額の調停が成立
審判手続において、裁判官が夫を説得した結果、夫は源泉徴収票を提出し、さらなる裁判官の説得により、審判ではなく、収入に応じた相当額の婚姻費用を支払う調停が成立した。
妻は、離婚しないで婚姻費用をもらえることになった。
弁護士の一言
離婚したい場合でも、離婚後の生活が成り立たないのであれば、思いとどまるべきときもあります。本件はまさにそのような事案でした。
なお、この事例のように、離婚せず別居している場合、生活費を夫からもらうことができます。
しかし、夫の方が婚姻費用を支払い続けるのが嫌になり、一方的に婚姻費用を払わなくなることがあります。妻としては、最初は弁護士なしで請求することが多いですが、夫に無視される場合もあります。
また、夫が婚姻費用の支払いが嫌になって、離婚を求めてくるということもあります。夫が、長期間の別居後に離婚訴訟を起こしてくると、裁判所は「婚姻関係は既に破綻している」と認定し、夫の離婚請求を認めてしまうこともあり得ます。
婚姻費用をもらいつづけるためには、「婚姻関係はまだ破綻していない」という状態である必要があり、具体的には、夫と連絡をとり、修復のための努力を(形だけでも)とっておいた方が無難です。
ただ、修復の努力だけでは限界があり、別居が長期間に及ぶといつかは離婚が認められてしまうので、婚姻費用をもらっている間に、離婚後の生活設計を考えておいた方がいいでしょう。
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