住宅ローンを支払っている場合の婚姻費用は?
妻との間で喧嘩が絶えず、私が家を出ていくかたちで別居を始めました。離婚が成立するまで、婚姻費用を妻に支払わなければならないと聞きましたが、私は、妻と子どもが住むマンションの住宅ローンを毎月全額負担しています。
- 相談者:夫 年収1568万円
- 相手方:妻 年収84万円
- 18歳の長男と、17歳の長女が妻と共にマンションに居住。相談者は別居。
- 相談者はマンションのローンとして月額16万円を支払っている。
婚姻費用を支払う側を「義務者」、受け取る側を「権利者」といいます。
住宅ローンは婚姻費用算定表から減額調整されることが多い
別居している妻が居住する自宅の住宅ローンを、夫が払っている場合は、婚姻費用算定表から減額調整されることが多いです。
婚姻費用の決め方
「婚姻費用算定表」とは、婚姻中の生活費の分担額を迅速に決めるために、裁判官が共同研究で作成した標準的な婚姻費用が定められた表のことです。
婚姻費用算定表の最新版は、裁判所のホームページで閲覧できます。
婚姻費用について、夫婦間の話し合いがまとまらない場合、審判等の裁判手続きによって決められることになります。裁判手続きにおいては、原則として婚姻費用算定表に基づき婚姻費用が計算され、特別な事情があれば個別に修正が行われます。
夫が妻の住む自宅の住宅ローンを払っている場合の婚姻費用
本ケースのように、夫が別居している妻の住む自宅の住宅ローンを支払っているような場合、夫は自分と妻の住居費を二重に支払っていることになります。
他方で、妻は住居費を負担していないことになり、これは不公平であるため、婚姻費用算定表の金額の調整が図られ、婚姻費用を減額できることが多いです。
裁判実務での減額調整の考え方
住宅ローンの支払いは、生活費の一部である住居費の支払いという側面もありますが、住宅ローンの支払いにより住宅ローン残高が減り自宅不動産の財産価値を上げていくことになりますので、資産形成の側面もあります。
このため、婚姻費用算定表の金額から住宅ローンの月額支払額全額を控除すると、夫婦間の扶養義務よりも資産形成を優先させる結果になり、単純な減額では妥当ではないといえます。
そこで、裁判実務においては、夫婦それぞれの収入や、当該収入に対する標準的な住居関係費の金額、ローンの支払い額、別居に至った経緯等などを考慮のうえ、婚姻費用算定表の金額からローン支払額の一部のみ減額するのが一般的です。
住宅ローンがある場合の具体的な算定基準
具体的に、婚姻費用算定表からいくら減額されるのかを判断する際の基準については、個別の事案に応じて様々な基準が用いられています。
(1)婚姻費用算定表で計算する際に、義務者の年収から1年間の住宅ローン支払額の全部又は一部を控除する方法や、(2)婚姻費用算定表により算出された金額から、権利者の収入に応じた標準的な住居関係費を控除する方法などが用いられております。
例えば、東京家庭裁判所で審判となった事件では、上記(2)の方法により婚姻費用が算定されました。
すなわち、まず、夫の収入と妻の収入を婚姻費用算定表に当てはめると、婚姻費用は月額30万円と試算されます。
次に、相手方の収入に対応する標準的な住居関係費は月額3万円弱であるとして、婚姻費用算定表の30万円から3万円を控除した27万円を夫が負担すべき婚姻費用であると判断しました。
弁護士に相談を
義務者が住宅ローンを支払っている場合の婚姻費用については、確立した算定基準といえるものがありません。
このため、相手方との交渉や裁判手続きにおいては、様々な判断基準と考慮要素の中から、当方にとって最も有利な主張を構成して、相手方や裁判官を説得していく必要がありますので、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
婚姻費用の計算方法や婚姻費用算定表については、離婚・男女問題に関するブログ「別居するときに問題となる婚姻費用とは」をご覧ください。
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