離婚相手の預金額が分からない場合に使える調査嘱託とは?

 離婚をするときには、財産分与を請求するための準備として相手の預金額を把握しておくことが大事です。

 でも、いざ離婚調停や離婚訴訟などの手続きが始まって離婚する段階になると預金額を教えてもらえない場合があります。その場合に有効な手法が調査嘱託です。

 次の目次に沿って調査嘱託についてご説明いたします。

財産分与における証明責任

 離婚の際には、婚姻期間中に増えた財産を分与してもらうことができます。 (財産分与の詳細はこちら

 しかし、「分与してくれ」といえばもらえるかというと、そんな簡単な問題ではありません。相手に財産があることは、請求する側が証明しないといけないのです。

 銀行に預金口座の取引履歴や預金額を開示請求しても、本人でなければ対応してもらえません。弁護士が開示請求しても同様です。

相手が通帳などの情報を開示してくれないときに使えるのが調査嘱託

 相手が預金通帳などの情報を開示してくれない場合に、相手の財産を調べる方法として使えるのが、「調査嘱託」です。調査嘱託とは、裁判所を通じて情報を開示させる制度です。

 例えば、夫が銀行に行って、「妻名義の預金がいくらあるか、通帳の中身を教えてください。」と頼んでも、銀行は絶対に通帳を開示してくれません。銀行口座があるのかどうかすら教えてもらえません。個人情報の扱いは厳しいからです。

 調査嘱託を裁判所に申立てを行い、認められると裁判所から銀行に対して預金を問い合わせしてもらえます。

調査嘱託の流れ

調査嘱託の裁判所での手続きは、次の通りです。

  • (1)調停や訴訟などの手続きが始まっていることが前提です。
  •     いきなり調査嘱託だけお願いしても裁判所からは相手にされません。

  • (2)当事者が、「調査嘱託をしてください」という調査嘱託申立書を裁判所に提出します。
  • (3)裁判所が、適正な財産分与額を決めるために必要かどうかを検討します。
  • (4)裁判所が必要と判断すれば、銀行に対して問い合わせてくれます。

 裁判所という公的な機関が、「公正な裁判のために必要」と判断したものだからこそ、銀行も回答してくれるのです。

 銀行に限らず、例えば、相手方の勤務先に対して、「社内預金の額」「退職金の額」を開示してもらうこともあります。

調査嘱託で銀行預金の開示を申請する場合

 銀行に対して調査嘱託をする場合、口座番号まで特定する必要はないのですが、銀行名と支店名は特定する必要があります。

 逆にいえば、銀行の本社に対して「おたくの銀行のどこかの支店に妻名義の銀行口座があるはずだから開示してくれ」という調査嘱託はできないのです(例外の銀行もありますが)。

 では、「全ての支店に調査嘱託をすればいいじゃないか」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、銀行の支店の数は膨大なので、裁判所は、全ての支店に対する調査嘱託はなかなか認めてくれません。

 相手がすでに銀行口座を解約していた場合でも、解約前の履歴については、調査することが可能な場合があります。

 ただし、調査嘱託ができるのは、裁判所が必要性を認めた場合に限ります。

調査嘱託を申し立てられた場合

 裁判の相手方が調査嘱託を申し立てた場合、申し立てられた側としてはどのように対応したらいいでしょうか?

 裁判所から意見を求められることもありますので、「調査嘱託は不要」といった「意見書」を提出する場合もあります。

 また、社内預金や退職金の金額などは自分で人事部に依頼をして裏付けの書類を発行してもらえる場合も多いと思います。

 裁判所から直接、会社に問合せがされると、裁判になっていることが会社に知られてしまいますから、そうなる前に、自主的に裏付けの書類を提出してしまった方が無難だと思います。

別居前にしておきたいこと(夫と妻の違い)

 このように、調査嘱託が利用できるのは、支店名がわかっている場合なので、別居前に、相手方名義の銀行口座がどの銀行のどの支店にあるかを調べておいていただきたいのです。

 よく、男性の相談者は、「妻はへそくりを多くしているはずだ!」とおっしゃるのですが、弁護士が「では、どの銀行のどの支店かお分かりになりますか?」と尋ねると、答えられる男性は少ないです。

 しかも、すでに別居した後にご相談に来られるので、調べようがないのです。

 これが、女性の相談者だと、このような迂闊なことはほとんどありません。

 「夫名義の銀行口座は全部把握しています!」という方が多いです。夫の通帳を妻が管理している場合もあります。

 また、そもそも、妻の場合、別居前にご相談にいらっしゃって、「別居前に準備しておくべきことを教えてください!」という方が圧倒的です。

 なぜだか離婚の財産分与に関しては、妻の方が戦略勝ち、ということが多いです。

 同居中は情報の宝庫です。通帳の表紙を見れば、銀行名と支店名はすぐに分かります。財産に限らず、不貞の証拠も収集しやすいです。

 離婚にはさまざまな準備が必要ですので、ぜひ、早めに弁護士にご相談にいらしてください。

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