調停離婚

調停離婚とは

 調停離婚とは、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てて離婚することをいいます。

 夫婦間で離婚の合意に至らない場合や、離婚の合意はあるけれども慰謝料や財産分与、子どもの親権などの離婚の条件を夫婦間の話し合いでまとめることができない場合に、離婚調停を申し立てます。

 離婚トラブルは、プライベートな問題を多く含み、当事者間でじっくり話し合うことが必要との考え方から、原則として、すぐに訴訟を提起するのではなく、まず調停で解決をはかることが義務づけられています(調停前置主義)。

離婚調停の内容

 離婚調停とは、離婚について当事者間の話合いがまとまらない場合や話合いができない場合に、家庭裁判所の力を借りて離婚を目指す手続きです。

 裁判所からの命令で強制的に離婚させられることを、世間では強制離婚と言われることもありますが、離婚調停を起こされても、すぐさま強制離婚させられるわけではありません。(法律上、「強制離婚」という言葉はありませんが、裁判官が判決で離婚を命じると、強制的に離婚させられることになります。)

 離婚調停では、通常男女各1名の調停委員に間に入ってもらい、離婚そのものについてだけでなく、離婚に関するあらゆる問題について同時に話し合いを行います。

 具体的には、夫と妻のどちらを離婚後の子どもの親権者にするか,親権者とならない親と子との面会交流をどうするか、子どもの養育費の負担の方法等の子どもの問題から、離婚に際しての財産分与や年金分割,慰謝料についてどうするかといった財産に関する問題まで、離婚に関することであればまとめて話し合うことができます。

 しかし、調停離婚でも、協議離婚と同様に、夫婦間の合意がまとまらなければ離婚はできません。不動産の財産分与は、手続きに時間がかかる場合があります。

調停離婚の手続きの流れ

調停離婚の手続きの流れを簡単にまとめると次のようになります。

(1)家庭裁判所へ離婚調停の申立て
(2)裁判所から相手方へ調停期日通知書(呼出状)の発送
(3)1回目の離婚調停
(4)2回目以降の離婚調停~調停成立(離婚調停調書の作成)
(5)市区町村役場へ離婚届提出
(6)子どもの苗字の変更

 以下、離婚調停の手続きの解説ですが、裁判所のページ「夫婦関係調整調停(離婚)」と併せてご覧ください。

(1)申立て

 申立ては、夫婦のどちらか一方のみで行うことができます。全国の家庭裁判所にある夫婦関係等調整調停申立書(裁判所のウェブサイトでダウンロードできます。)に必要事項を記入して申し立てます。

 申立書に記入する内容は簡単なものですが、親権者や、養育費、財産分与、慰謝料の金額の記入欄があり、これらの希望金額等を記入する必要があります。金額をいくらと書いたらいいか分からない場合は、事前に弁護士に相談するなどして相場を理解しておいた方がよいでしょう。

(2)裁判所から相手方へ調停期日通知書(呼出状)の発送

 申立てが受理され、書類に不備がなければ、通常1週間~2週間程度で第1回調停期日が記載された調停期日通知書という書類が家庭裁判所から当事者双方に郵送されます。調停期日にどうしても出頭できない場合は調停期日の変更を申し立てることも可能です。

 なお、正当な理由なく出頭しないときは5万円以下の過料を課されることがあるとされていますが、実際にはほとんどありません。

(3)1回目の調停

 離婚調停の当日は、指定された裁判所に出廷します。調停には原則として当事者本人が出席しなければなりません。弁護士なしでも調停はできます。

調停における弁護士の役割

 弁護士が同伴したり、弁護士が代理人として出席したりすることもできます。弁護士が出席していれば、本人は出席しなくて良い場合もあります。

 しかし、調停はその場でいろいろなやりとりがなされることが多いので、弁護士に依頼をした場合でも弁護士だけが出席するのではなく、本人も一緒に出席した方がその場で相談ができるので好ましいといえます。

 また、弁護士が代弁することで、依頼人が不利な発言をしてしまったり、不利な合意をしてしまうことも防げます。

 弁護士は調停中でも「信頼できない」と感じたら、別の人に依頼し直すなどして、弁護士を変更してもかまいません。

離婚調停の内容と時間

 1回目の調停では、冒頭に当事者双方同席のもとで、調停委員から調停の意味や手続について説明を受けます。その後、調停委員が当事者から交互に事情を聞いていきます。

 調停1回あたりにかかる時間は2~3時間です。これは、夫婦それぞれから調停委員が話を聞くということを、それぞれ30分前後、複数回繰り返すためです。当事者のそれぞれから調停委員が話を聞く際には、他方の当事者は、控え室に待機することになりますので、冒頭の説明の時を除いて、相手方本人には会わずに調停委員とだけ話すことができます。

離婚調停のメリット

 離婚に向けての話合いは、感情的になってしまいがちなものですが、調停の場合、調停委員という第三者を介しての話合いですので、当事者だけで直接話し合う場合と比べて、無用なトラブルを避けることができます。特に配偶者からの暴力に悩んでいた場合など、相手と直接顔を合わせることの精神的な負担が大きいケースでは、調停という制度の利点は大きいといえます。

(4)2回目以降の調停~調停成立

 調停は、2回目以降は約1か月ごとに行われ、半年程度で終了することが多いです。調停離婚が成立する際には、必ず当事者本人の出席が必要で、代理人弁護士しか出席していない場合は、調停離婚は成立となりません。

 しかし、当事者の一方が遠隔地に居住しているため、調停が行われる家庭裁判所に行くことが困難なので、本人に代わって弁護士だけが代理人として調停に出席してもらいたいというケースもあります。そのような場合、離婚すること自体と離婚の諸条件の点で合意ができた場合には、協議離婚をすることを約束とする調停を成立させ、離婚の諸条件について調停調書に盛り込むという方法があります。

 この場合、当事者双方が離婚届に署名捺印をして(証人2名の記載も必要)、調停成立後に、どちらかの当事者(通常は申立人)が責任を持って役所に離婚届を提出し、この提出の時点で正式に離婚成立となります(調停離婚の場合は、裁判所で調停が成立したと同時に離婚が成立するのと異なります)。

調停調書の作成

 調停が成立すると、家庭裁判所は調停調書を作成します。調停調書には、離婚することに合意したことや親権・金銭に関する事項が記載されます。

 調停調書には裁判の判決と同じ効力がありますので、これが作成された後には、不服を申し立てることや調停を取り下げることはできません。調停成立の際には、納得できるまで説明を受けましょう。

 離婚調停成立後は、調停に基づいた各種手続きを行っていくという流れになります。具体的には、離婚届を役所に提出する、年金事務所で年金分割の手続を行う、家庭裁判所で子の苗字の変更の手続を行う等です。

(5)離婚届の提出

 離婚届は、調停調書作成日を含めて10日以内に、通常は調停を申し立てた側が、調停調書の謄本と戸籍謄本を添えて、申立人の所在地または夫婦の本籍地の市区町村役場へ提出します。

 なお、夫婦の本籍地の市区町村役場へ提出する際には、戸籍謄本は不要です。

(6)子どもの苗字の変更

 離婚が成立しても、子の氏(苗字のことです)は自動的には変更されません。そのため、離婚によって婚姻前の氏(旧姓)に戻った親の氏は、子の氏とは異なることになります。

 そこで、離婚によって婚姻前の氏(旧姓)に戻った親が子を自分の戸籍に入れるためには、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可申立て」をする必要があります。

 そして、家庭裁判所の許可を得た上で、入籍届を役所に提出します。この入籍届をしなければ、子の氏は変わりませんので、ご注意ください。

離婚調停の取り下げ

 離婚調停中であれば、理由の如何に関係なく離婚調停は取り下げることができます。

 調停で話し合っているうちに離婚することが不利だと感じたり、離婚する気が失せてしまったりといった自分都合の理由でもかまいません。

 離婚調停を取り下げる方法についてですが、調停の場で「取り下げます」と言えば、裁判所が用意している取下書への記入を促され、それで取り下げが完了します。郵送での取り下げも可能です。

離婚調停が不成立になったら

 離婚調停をしても、そこで話し合いがまとまらず、双方で合意に至らずに終了する場合があります。そのような状態を「不成立」といいます。

 離婚調停が不成立になった場合、離婚訴訟を提起するか、とりあえず離婚訴訟を保留にして様子を見るかの選択肢があります。

 「離婚したい」という意思が強い場合には、離婚訴訟(裁判)を別に提起する必要があります。離婚調停が不成立になれば自動的に離婚訴訟に移行するわけではありません。

 なお、離婚訴訟を提起しないで、時間をおいて再度離婚調停を申し立てることも可能です。

離婚調停の弁護士対応

調停離婚を弁護士に依頼されると、次のようなメリットがあります。

離婚調停などの手続きの流れが分かる

 多くの方は、調停は初めての経験であり、何をしたらよいのか、どのように進むのか、書面には何を書けばよいのか、話し合いが上手くいかなかった場合に次はどのような手続きをとればよいのかなどが分からないと思います。

 離婚調停において弁護士をつけることにより、離婚調停の手続きや流れ、今何を主張すべきなのかなどを適確に理解することができます。

煩雑な書面作成から解放される

 離婚調停を進めるためには、裁判所に多数の書面や資料を、期限に遅れないように提出していく必要があります。仕事や家事を抱える中で、期限を管理しながら書面や資料の準備を行うことは、大半の方にとって大変な作業になると思われます。

 これに対し、調停において弁護士をつけることにより、書面等の準備は弁護士に任せられることになり煩雑な作業から解放されます。また、期限をうっかり徒過してしまうリスクも回避できます。

双方の言い分を適確に検討し対応できる

 離婚調停の当事者になっても、これまでとくに法律の勉強をしてこなかった方が大半だと思いますので、難解な法律用語が飛び交う調停において、十分に自分の主張を伝えたり、相手方の主張をきちんと理解した上で反論を行ったりすることが困難な場合がありえます。

 これに対して、弁護士をつけることにより、自分の主張を裁判所・相手方に十分に伝えることができますし、相手方の主張もきちんと分析して理解、対応することが可能になります。

相手方の不当な要求を「不当である」と分かる

 弁護士をつけずに本人だけで調停に出席すると、法令や判例等に詳しくない結果、相手方の不当な要求に対して「不当」と気付くことができず、相場からすると著しく不利な合意をしてしまう可能性があります。

 もちろん、離婚調停においては、調停委員がある程度アドバイスや意見調整をしてくれることがありますが、調停委員は中立的な立場ですので、当事者一方だけに偏ったアドバイスやサポートは期待できません。

 このため、不当な要求を不当であると気付けることは、離婚調停で望ましい結果を獲得する上で非常に重要になってきます。弁護士をつけることにより、相手方の不当な要求に対しては「不当である」と分かったうえでの対応が可能になりますので、誤って不利な合意をしてしまうリスクを回避できます。

判例や裁判実務の傾向を踏まえて、適切な見通しのアドバイスが受けられる

 離婚や親権が問題になっている事件では、残念ながら必ずしも自分の望む結果を獲得できるわけではありません。見通しを誤って対応を進めてしまうと、数年かけて争ったが、何一つ良い結果が得られなかったという、踏んだり蹴ったりといった結果になりかねません。

 弁護士から見通しのアドバイスを受けることにより、場合によっては徹底抗戦を回避し、早期解決を図ることにより相手方から譲歩を引き出すなど、適切な着地点を見据えた調停対応が可能になる場合があります。

このように、調停離婚を弁護士に依頼されることには、多くのメリットがあります。離婚調停を考えている方は、離婚調停事件の対応経験が豊富な上大岡法律事務所にご相談ください。


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